イタリア出身・ロンドン拠点のアーティスト、Andrea OttomaniことBig Handsによるデビュー・アルバムが〈Marionette〉からリリース。

2024年6月、嵐に揺れる地中海を横断中に2夜続けて見た夢から着想を得て構想されたという本作は、夢の中で聴こえた音や構造をそのまま現実に写し取るようにして制作されたという、まさに記憶と幻想のあわいに浮かぶ音の航海。ベルやバラフォンといった調律打楽器の響きが、イタリア、ギリシャ、エジプト、トルコといった地中海沿岸で収録された音と有機的に溶け合い、呪術的で神秘的な音の世界が静かに展開されていきます。パレスチナのアーティスト بنت مبارح（Bint Mbareh）の魅惑的な声と、Abraham ParkerとIzzy Karpelのブラスが織りなす対話、さらにBuster Woodruff-Bryantによるサックスが螺旋のように舞うワルツを奏で、Yusuf Ahmedのドラムのリズムとともにスピリチュアルな旋律を響かせます。マントラやAndreaの親しいコミュニティの声が散りばめられたサウンドスケープには、過去の記憶や郷愁、深い祈りが織り込まれ、海のさざ波、蝉の声、祈りの声といったフィールドレコーディングが、空間の輪郭をそっと浮かび上がらせ、古代の記憶と現代の感性が交錯する音の地図を描き出しています。記録と夢想、民族誌と音響実験が混ざり合ったような、詩的な傑作。素晴らしいです。[GRRRDEN]