世界中の音の風景を継続的にアーカイブし続けるフランスのレーベル【PRESQUE TOUT】による、フィールドレコーディングTAPEシリーズの第8弾。

本作には、北アフリカのスーフィーの夜の儀式を記録したCHLOÉ DESPAXと、南アジアの夜明けの野鳥たちのさえずりを捉えたDEEPAL WARAKAGODAによる2篇のフィールドレコーディングが収められています。動と静、対極にあるようでいて響き合うふたつの音のドキュメント。それぞれの土地に根ざした音の力と、共同体に息づく霊性を浮かび上がらせます。

CHLOÉ DESPAXによる録音は、モロッコ・タンジェ旧市街のハムドゥーシャ教団のザウィアで行われたハドラの儀式にて収録。スーフィズムにおける霊的トランスと癒しの実践が、詠唱、打楽器、ガイタの重なりとともに、現地の人々の呼吸に寄り添いながら立ち上がります。

一方、DEEPAL WARAKAGODAによる録音の舞台は、スリランカ・コロンボ郊外の小さな庭。都市の眠りが覚めゆく夜明けに、鳥たちのさえずり、リスの鳴き声、ミツバチの羽音、昆虫たちの高音の囁きが重なり合い、柔らかな朝の空気を震わせます。

それぞれの解説とともに、異なる土地の音が奏でる世界の息づかいをお楽しみください。
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︎▶︎CHLOÉ DESPAXによる解説
モロッコ・タンジェ旧市街（メディナ）、ハムドゥーシャ教団のザウィア
2024年3月5日 午後10時20分
【緯度経度：35.78652349486726, -5.812339054699123】
ハドラ（霊の招喚とトランスの儀式）は、スーフィーの音楽的な儀式で、この宗教的な場「ザウィア」で毎週金曜の夜に開催されます。この癒しの共同体的儀式では、主に女性たちが、詠唱、パーカッション、ガイタ（アンズの木で作られた二枚舌の縦笛）の高揚するリズムに合わせて踊り、トランス状態に入っていきます。

演奏者：
Moqadem Stitou aka Mohamed Zher (master of ceremony)
Weld Sitou aka Mohamed Said Zher and Said Tadlaoui (ghaïta)
Jaouad Doukali, Abdelali El Aitouti, Chaaibi Laamairi, Salem Menchour, Youssef Zher, Mohamed Linchou, Rachid El Houat, Hamza El Alaoui (voice and percussion)
この録音は、N’btaでのサウンドアート・レジデンシー中に収録されました。

録音機材：
Microphones : Schoeps MS - MK8 and MK4 Colette capsules
Recorder : Sound Devices MixPre-3



︎▶︎DEEPAL WARAKAGODAによる解説
スリランカ・ネイチャーサウンド & Drongoネイチャーサウンドライブラリ
コロンボ（スリランカ）
2024年5月5日 午前6時
【緯度経度：6.861226, 79.909415】
2024年の「国際ドーンコーラス・デイ」の朝、5月5日、私はコロンボの郊外にある、程よく木々に囲まれた両親の家の前の窓から庭へ、ステレオマイクを設置しました。
その朝のコーラスには、さまざまな庭の常連鳥たちの声が響きました。たとえば、オオマルハシ（2024年スリランカ・ネイチャーサウンド“ソングバード・オブ・ザ・イヤー”）、アカハラショウビン（Red-vented Bulbul）、ムネアカタイヨウチョウ（Purple-rumped Sunbird）、サイホウチョウ（Common Tailorbird）、オオホンセイインコ（Rose-ringed Parakeet）、オオバンケン（Western Koel）、シロハラカワセミ（White-breasted Kingfisher）などが含まれていました。

また、インディアンパームリス（リスの仲間）の鳥のような鳴き声、近くの花に引き寄せられたミツバチのブンブンという羽音、そして非常に高音で細かく続く小さな昆虫の鳴き声も録音されています。

録音機材：
Microphones : LOM basicUcho x 2 AB rig
Recorder : Zoom H6